聞こえのバリアフリーは切実 「夫婦疎遠に」「電話は困難」

2019年6月27日

共産党都議団 高額な補聴器の補助拡充を
 耳が遠くなった高齢者が、家庭の中でも社会的にも孤立し、引きこもりになりがちになると言われています。加齢性の難聴は認知症の大きなリスク要因ともなるとの研究結果もあります。一方、早めに補聴器を使用することで難聴の進行を抑えたり、社会生活を送る上での障害を取り除くことが可能です(聞こえのバリアフリー)。ただ機器が高額、使用には専門家の適切な調整が必要など、普及には課題もあります。日本共産党の池川友一都議は都議会一般質問(12日)で、独自に実施したアンケートに寄せられた声をもとに、都に支援拡充を提案し、都民から期待の声があがっています。 (長沢宏幸)

知事も前向き答弁
 「耳が遠くて返事もしないというのは夫婦間をなんとなく疎遠にします」「電話での会話が困難で、ファックス通信で交流しています」。共産党都議団が独自に行った「難聴と補聴器に関するアンケート」(504人)に寄せられた声です。

認知症リスク
 65歳以上の高齢者の半数は、難聴があると国の研究機関の調査で推定されています。2017年の国際アルツハイマー病会議では、ランセット国際委員会が「認知症の約35%は予防可能な9つの要因により起こると考えられる。その中では難聴が最大のリスク要因である」と発表しました。厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)でも、難聴は危険因子の一つとされています。
 しかし補聴器の値段が高いことが、なかなか手が出ない理由になっています。共産党都議団のアンケート結果では、片耳使用者を含む平均購入額は約27万円でした。同アンケートにも「難聴なので耳鼻科にいったが、あまりに高いこと、一度買っても何年かごとにまた取り替えなくてはならないと知り、とても手が出ずがまんしています」といった声が多く見られます。

 またアンケートでは、補聴器を使用してみようと思う動機になるもののトップは「購入費補助制度」でした。
 国の購入補助はあるものの、障害認定によるもので(原則自己負担1割)、両耳聴力が70デシベル以上などかなり重い難聴でなければ障害認定されません。
 一方、WHO(世界保健機構)は聴力が中等度難聴の41デシベル以上の場合は補聴器の使用を推奨しています。池川都議は、こうした問題を指摘した上で、補聴器を難聴が進行する前に使用する有効性について専門医の話も紹介しながら強調。都の認識をただしたのに対し、内藤淳・福祉保健局長も「早期からの補聴器使用は、日常生活の質の向上を図る上で有効である」と認めています。
 また池川都議は、補聴器を使用している人でも、有効に調整が行われていないケースが多いと指摘しました。補聴器は機器を購入しただけでは、正しく使えません。機器の様々な調整と脳が補聴器の音に訓練され、音を聞き取れるようにするトレーニングを一体的に行うことで、本人の聞こえに合わせて聞き取れるようにしていくのです。

少ない技能者
 こうした専門的な調整を行うのが認定補聴器技能者です。国の医療費控除を受けるには、補聴器相談医が記入した診療情報提供書を認定補聴器技能者がいる専門店に提出して購入しなければなりません。しかし補聴器相談医や認定補聴器技能者が少なく、一人もいない自治体もあります。
 池川都議はこうした問題を指摘し、都民が補聴器相談医や認定補聴器技能者にアクセスしやすくすることや、区市町村が行う補聴器購入補助や支給への支援(高齢社会対策区市町村包括補助)の拡充や都の補助制度を求めました。
 小池百合子知事は「多くの高齢者にとって難聴は身近な問題で、必要な情報を容易に入手できる環境整備が重要。高齢者の聞こえの支援を進める」と、前向きな答弁をしました。
 現在、都内の自治体が独自に補助制度を実施しているのは8区(表)にとどまっており、各区市町村の共産党議員団は補助制度の提案をしています。自治体の今後の対応が求められます。

共産党都議団のアンケートなどから
石井孫三郎さん(93)=東久留米市= 脳梗塞を患って以来、だんだん聞こえが悪くなり、家族の話や来訪者の話を聞き取れない場合が多い。電話の対応も聞き取れない場合がある。補聴器が必要と思いますが、いまさら高いお金をだしてまでとも思っています。
依田丈治さん(92)=東久留米市= 70歳頃に大学病院で聴力を計測し、病院の指定業者から補聴器を片耳約20万円、両耳で約40万円で購入しました。その後、買い換えなどで約80万円もかかり、購入には苦労した。近所の専門店が今年4月に廃止となり、調整には武蔵野市の店まで行かなければならなくなりました。補聴器を付けていないと、夫婦の話し合いもできず、今は電話の声がきちんと聞き取れない状況です。買い換えるにしても値段が高すぎます。