キャビンクルー・ユニオン 組合差別撤廃で前進

2019年5月17日

日本航空 誰もが働きやすい職場に
 組合員を差別したリ、大規模なリストラを計画するなど公正さに欠けていた職場で、労務管理に変化が生まれる事例が出ています。春闘で成果をあげようとたたかう2つの職場を取材しました。

春闘で職場に変化
 「この春闘はこれまでになく手ごたえがあった」
 日本航空(JAL)の客室乗務員でつくるCCU(キャビンクルーユニオン)の平岩元美書記長は言います。CCUは3月にストライキを構え、賃金・一時金、解雇問題、乗務人員の増員などの切実な要求について、使用者側と交渉してきました。
 職場では、ホンコン線の編成で、客室乗務員の人数が1人増員されたことや、マニラ線の日帰りパターンをステイ(宿泊)に変えさせたことが歓迎されていると言います。「所帯は小さい組合だけど、職場と結びつき、頼りにされている」と平岩さん。若い客室乗務員の「CCUがやってくれたんですね」と喜ぶ声も寄せられていると話しました。
 JALは2010年1月に経営破綻し、ベテランの客室乗務員を53歳という年令で区切って解雇しました。経営は1年後には回復したものの、賃金・労働条件は低いままにとどまっています。
 その中でも、2016年11月に導入された「新勤務基準」は、4勤2休を原則として、それまでは出来なかった国際線と国際線の組み合わせを可能にする過重勤務体系となりました。
 CCUは手分けして直接職場の声を聞き取り、実施したアンケートには1300人が回答。組合掲示板を使ったシール投票にも、2000件の「新勤務反対」の声が寄せられたと言います。
 また、「JALFIO(連合系労組)は新勤務で協定を締結したのに対し、CCUは交渉を継続した」と平岩さん。協定の関係で、約1年間、CCU組合員とJALFIO組合員の勤務基準が異なるという現象が生じたことで、「組合員は職場でCCUであることを意識することが多くなりましたが、職場が頼りにしていることを知るきっかけにもなり、結束が強まったと感じている」と語りました。
 CCUは30年来続いてきたショーアップ前(出勤前)のサービス残業に残業代を要求し、この労働時間管理の問題でも大きな前進をつくっています。
 「この問題では国会で山添拓参院議員が取り上げてくれて、厚労省から、『業務に必要な準備時間は労働時間』という答弁を引き出してくれたことが力になりました」

歴史的な変化と
 平岩さんは会社側の変化についても話します。
 3人のCCU組合員が実名を上げ、昇格に関する不当労働行為を会社に告発したことで、会社は不当労働行為の事実は認めませんでしたが、職場の組合差別が風土としてあることを認めました。
 それらの交渉の中で、「2019年ローリングプラン客室本部運営方針」の中に、「所属組合に関わらず」との文言を盛り込み、組合への回答とするという回答を引き出しました。会社は管理職とチーフへの教育を繰り返し行い、「組合差別はやってはらならないことの意識を徹底している」と言っており、一歩前進ですと平山さんは話します。
 「私たちは、誰もが働きやすい職場にしたいと強く求め交渉してきました。過去の組合差別の歴史を知っている私たちにとって、歴史的な大きな変化だと受け止めています」と語りました。

ファンドから会社守る アデランス 労組が発展

 全労連・全国一般労組アデランス支部は、2009年5月の株主総会での経営権乗っ取りに危機を感じた労働者、中間管理職が同年10月に結成、公然化。その後、目覚ましい発展を遂げた単組です。
 支部長の杉本時治さんは当時、宣伝部次長という業務の中心を担っていましたが労組結成を決意。その当時を「ファンド経営がビルなどの財産を売却するとか、リストラが700~800人規模であるんじゃないかとか、職場に不安が広がっていました」と振り返ります。
 杉本さんは同じ労働組合活動をしていた兄の紹介で、全国一般を訪ねて労組結成に踏み切りました。労組は10月、30人で会社に乗り込み、団交を申し入れ、リストラや本社ビルの処分をストップさせましたが、業績の低迷が続き、461人の希望退職者を出してしまいました。
 その後、未払い残業代総額3億円を、遡及して全社員に支払わせたり、パワハラを裁判に訴えて、解決金を支払わせるなど従業員のために本気で闘う姿勢で職場の支持を勝ち取りました。
 杉本さんは「基本的に会社は組合が好きではありません。その中で我々は、『従業員のためなんだから、話し合って解決しよう』と繰り返し働きかけました。すると、会社側も変わるんです。また、第二組合ができ、我々は『労組は働いている人たちのためにあるんだから、小さくても大きくても対等』と主張してきた」と杉本さん。「労組の存在意義は、働きやすく、生活が安定する会社を目指して改善することだ」と言い切ります。
 60歳以降の時給制度を正社員化して、65歳まで働けるようにしたときには「助かります」との声が届いたといいます。
 いま、春闘で、基本給と一時金の交渉の真っ最中です。「若い人たちの基本給が大卒で19万円台。中途離職が止まりません。ひとが育たない会社で50年、100年と存続できるのか、経営者に問いたださなくてはなりません」