新型コロナ “日常の足”の安全守って バス会社 感染対策にばらつき

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が今月末まで延長され、生活に制限が加わり1カ月半以上が経ちました。公共交通機関内での感染拡大を懸念する声が聞かれる中、鉄道駅と郊外を結び運行する路線バスは、比較的密になりやすい“日常の足”です。都内を運行する路線バスの主要14事業者の対応を調査しました。(菅原恵子)

労組の要求で設置の例も

 都内を運行する路線バスは、運転手が料金の受け取りから乗客の乗降介助までこなす“ワンマン運行”が主です。運転席と客席間は遮蔽するものがなく、極めて近い距離となっています。こうした中、4月初旬には都内のバス事業者で海外渡航歴のない運転手が、新型コロナウイルスに感染していることが明らかになりました。
 国土交通省は4月21日付で「新型コロナウイルスの感染防止対策の徹底について(再要請)」という事務連絡を出し、一部座席の使用禁止や運転席の防護スクリーンの設置などの徹底を要請し、“3密”回避を促しています。これを受けて14日、一般社団法人日本バス協会は「バスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン(第1版)」を発表しました。

改善を求めて団交

 バス事業者の対応はまちまちで、13日現在、防護スクリーンの未設置は京王電鉄バスを残すのみとなっていました。
 新京王労働組合(佐々木仁執行委員長)は13日、京王電鉄バスと団体交渉を実施。「乗客と乗務員の感染防止のため」に他社並みに防護スクリーンの設置などを求めた結果、14日より順次設置が行われると回答がありました。佐々木委員長は「お客様、乗務員双方の安心・安全を守るために、必要な対策が行われることは喜ばしいです」と会社の対応を大歓迎しています。
 他方、調査の中では運行ダイヤの問題が明らかになりました。緊急事態宣言下で閉鎖されているショッピングモールやレジャー施設、学校などが行き先である場合、減便・運休が生じています。しかし、郊外の住宅地・団地と鉄道駅を結ぶ路線の一部では、減便の影響で通勤時間帯にすし詰めの状況が生じており、事業者任せにせず行政と一体での改善が必要になっています。(写真)
 車内では換気のため窓の開放、一部座席の使用禁止の協力を求めているとのことでした。ある運転手は「お客様が排ガスなどを気にして、閉めてしまうことがあり困っています。また、混雑時に座席使用を強く求められて、運行に支障が生じることもあります」と話します。コロナ対策の後退がないよう、乗客の理解と協力も不可欠です。

コミバスに対応差

 コミュニティバスでも対応にばらつきが生じています。自治体で運行しているコミュニティバスはバス事業者に運行・整備を委託しています。それぞれの委託仕様書で細かい取り決めに差があるために、新型コロナウイルス対応に違いがあることがわかりました。
 委託先のバス事業者は運転手のマスク着用や、走行中の窓開け、清掃時に消毒作業を追加するなどの自主努力をしています。一方で防護スクリーンの設置は自治体ごとに差があり、路線バスと比較して遅れているようです。「“内装の変更”にあたる可能性があり、委託元の自治体の指示がないと勝手に対応することもできず厳しい」や「運転時に視界・視野に支障をきたしてはいけないので、自己判断はできない」「費用負担が示されない」「営業所に任せている」という委託先事業者もありました。
 他方、委託費用には新型コロナウイルス対策費用は盛り込まれていないことが多いのが実態です。委託元の自治体は新型コロナの感染拡大を避けるため、費用も含めて早急な対応が求められています。