新型コロナ 命守る責任を果たせ 緊急事態宣言5月末まで

協力金延長 支援求める運動で

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国の緊急事態宣言の5月末までの延長を受け、東京都は外出自粛や事業者への休業要請、都立学校の休校など、これまでと同じ措置を継続します。都民の生活や営業への影響も深刻さを増し、「自粛と補償はセットで」の声や、支援を求める都民の運動が広がっています。そうした中、都は中小業者や個人事業主に支払う「感染拡大防止協力金」を延長期間も追加で支給します。(長沢宏幸)

 小池百合子知事は5日に開いた記者会見で、「いまだ予断は許さない。この段階で気を緩めては感染が拡大しかねない」と強調。都民に引き続く不要不急の外出や都道府県をまたぐ移動の自粛などを要請。事業者には休業や出勤抑制、テレワークの推進、イベント開催の自粛など、これまでと同じ対応を求めました。
 小池知事はまた、感染予防対策として、総額449億円の本年度補正予算を編成し、7日に専決処分しました。
 補正予算には、休業で減収となった個人への貸し付け原資の増額分(337億円)を計上。ほかに、学童クラブの午前中からの開所への上乗せ補助などを盛り込みました。

NPOも対象に

 7日以降の休業要請に応じた中小業者、個人事業主への「東京都感染拡大防止協力金」(1店舗50万円、2店舗以上100万円)の予算は、6月議会に補正予算案を提出します。
 都はまた、支給対象について、NPOなどにも拡大すると7日、発表しました。共産党都議団が求めていました。都はこれまで、休業などによる経済的な影響が大きい中小企業や個人事業主を対象としていましたが、それらと同程度の規模と活動内容の特定非営利活動法人(NPO法人)、一般社団法人と一般財団法人、事業協同組合なども対象とします。追加分は未定としています。
 支給条件は、緊急事態措置期間中に休業などの要請に全面的に(少なくとも4月16日から5月6日まで)協力したことをあげています。
 都はすでに追加支給の対象にすると公表(4月28日)していた自主休業した理美容業者(1店舗15万円、2店舗以上30万円)については、延長期間の追加給付はしない方針です。

学校への対応

 都は緊急事態宣言の延長を受け、全ての都立学校を5月31日まで臨時休校するとしました。
 休校期間の学校活動については、パソコンやタブレットを使ったオンライン教育による家庭学習の推進、電話連絡や家庭訪問による児童・生徒の心身の状況把握とケア、特別支援学校では必要に応じて学校で過ごすことが可能などとしています。
 都は区市町村の教育委員会に対し、都立学校の取り組みを参考とした対応を依頼しています。
 都は補正予算に区市町村立学校でのオンライン学習などの環境整備に向けた緊急支援に48億円を計上。学習用パソコンが家庭にない児童・生徒に向けて、都が購入したものを貸し出します。

緊急アクションが要望 生活困窮者の相談強化を

 生活困窮者支援団体などでつくる「新型コロナ災害緊急アクション」(32団体=8日現在)は8日、都内のインターネットカフェ(ネットカフェ)休業に伴う都の一時住宅提供支援事業の利用者への相談体制の整備などを求める要望書を都に提出しました。参加者は「命を守る責任が都にはあるが、SOSを発信している人がたくさんいる。一人も路頭に迷わせないでほしい」などと訴えました。
 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言後、都はネットカフェに休業要請をしています。ネットカフェに宿泊していた人(都推計4000人)は、都の支援事業「TOKYOチャレンジネット」などで用意されたビジネスホテルを利用しています(8日時点で約830人)。
 こうした人たちの中には、精神疾患などの理由ですぐに就労できない人や、多重債務で債権者から逃げている人、DV(家庭内暴力)や虐待の被害者らが多数含まれ、住民票を以前の住所に置いたままの人が少なくないとみられます。また、こうした事情から所持金も少ないのが実態です。
 「緊急アクション」は、▽同支援事業利用者に対する生活保護申請や債務整理、特別定額給付金を受け取るための住民票の移動手続きなどの相談体制の整備▽TOKYOチャレンジネットから区市の事業(生活保護など)に支援の枠組みが移る場合、区市との情報共有やホテル移動の際の猶予期間など柔軟な対応▽支援団体が行う相談会の告知ビラの配布など確実な情報提供─などを求めました。
 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの大西連理事長は、支援事業利用後の支援体制について、「都は各自治体と連携して、当事者が福祉窓口でたらい回しにならず、早期にアパートへ移行できるような支援をつくってほしい」と訴えました。
 また、他の参加者からは、感染リスクが高い簡易宿泊施設の利用者のための発熱外来の設置要望や、自国に戻れない外国人労働者の深刻な生活実態などが出されました。
 都の担当者は、持ち返り検討するとしました。

後手後手招いた政府の姿勢 法政大名誉教授 五十嵐仁さんに聞く

 政府は新型コロナウイルスの感染拡大にともなう緊急事態宣言を、5月31日まで延長しました。自粛要請に伴う補償でも、医療崩壊を防ぐ対策でも、国の対応が遅れ、収束への道は見えていません。コロナ対策は、1カ月後に迫る都知事選(6月18告示、7月5投票を予定)でも大きな争点になります。政治学が専門の五十嵐仁法政大学名誉教授(「市民と野党の共闘の実現で都政の転換をめざす呼びかけ人会議」呼びかけ人)に、政府と都の対応について聞きました。  (荒金哲)

 安倍政権が4月7日に緊急事態宣言を発出しなければならなかったこと自体が、コロナ感染対策の失敗を示しています。当初の水際対策などがうまくいっていれば、感染拡大を抑えこめた可能性もあったのですから。
 しかも、当初の宣言の期間で収束できず、約1カ月延長することになった。二重の失敗です。
 現状は、感染拡大のピークを過ぎたとも言われていますが、予想したまでの減少にはなっていない。宣言に伴う自粛への、きちんとした補償のメッセージが届いていないことが一番の問題です。
 安倍政権が目玉政策として打ち出したマスク2枚すらも、多くの国民には届いていない。10万円の支給も、6月に延びるところもある。政策の中身も貧弱ですが、スピード感がまったく欠けています。
 この間の安倍政権の対応は後手後手だ、無能だと厳しく批判されていますが、「その通り」と言わざるを得ません。