公的医療を守る都立病院 都直営でこそ安定的経営

2019年12月11日

 小池百合子知事が所信表明(3日)で、都立病院の運営について、地方独立行政法人への移行を進めるとの方針を突然表明しました。都民からは「公的な医療が守られるのか」と不安の声が上がっています。10日の都議会代表質問では日本共産党の原田あきら都議が、この問題を取り上げ、独立行政法人化(独法化)方針の撤回と都直営の堅持を強く求めました。 (長沢宏幸)

独法化表明を批判 共産党 原田都議
 地方独立行政法人とは、自治体が担っていた事業を独立させるもので、事業の効率化が優先されることが課題とされます(別項参照)。職員は原則非公務員化されます。原田都議は独法化された他県の病院について「経営の効率化や採算性などが強調され、公的に担うべき医療の重大な切り下げが相次いでいる」とのべ、いくつかの事例を紹介しました。
 滋賀県の大津市民病院は、経済的困難を抱える人でも経済的負担なく子どもを産める入院助産制度が利用できる市内で唯一の病院でしたが、独法化後に分娩を休止。宮城県では循環器・呼吸器病センターが廃止となりました。神奈川県では、医師が次々退職し、その責任を巡り県と法人の当時の理事長が対立しています。
 ところが小池知事は所信表明で、「東京の医療のセーフティーネットである都立病院は、これまで以上に安定的な経営基盤を確立し、引き続き、行政的医療の提供や地域医療の充実をしていかなければなりません」とのべ、独法化によって、こうした課題が実現するかのようにのべました。
 原田都議は「セーフティーネットである都立病院は、東京都が直接責任をもって運営すべきではないか。都立直営こそが、最も安定的な経営基盤ではないか」と提起し、小池知事の認識をただしました。

都民あざむく
 独法化方針の出発点は、都が設置した都立病院経営委員会が2018年1月に出した提言です。都の一般財源から都立病院の運営に400億円を繰り入れていることを問題視した上で、その後、独立行政法人化を検討すべきという報告書をまとめました。
 原田都議は都立病院について「小児、周産期、障害者、難病、災害医療など不採算であっても都民に必要な医療の提供を使命としている。一般会計からの繰り入れはそのために不可欠なもので、赤字の穴埋めではありません」と主張しました。
 経営委員会が独法化の提言に基づく委託調査を受注し、独法化が「望ましい」との報告書をまとめたのが監査法人トーマツです。同社は独法化の支援を業務としており、経営委員会で都立病院の「独立行政法人化がふさわしい」と発言していたのも同社の社員でした。
 原田都議は、こうした事実を告発し「これで公平性・中立性を確保して検討したと言えるのか」と追及。石原都政が16カ所の都立病院を半減させ、清瀬、八王子の小児病院廃止を強行したのに、「その総括も反省もないまま、独立行政法人化こそ柔軟で効果的だなどと言って進めることは許されない」と強調。
 その上で、小池知事が所信表明で「都民の皆様の生命と健康を守る使命を、着実に果たしていく。そのために」都立病院を独法化するとのべたのは、「都民をあざむくもの」だと批判しました。
 原田都議の代表質問では、防災対策や気候変動への対策、福祉政策、消費増税の問題、首都大学の学費軽減、就労支援、中央卸売市場条例の「改正」案、2020年東京五輪・パラリンピックの取り組み、羽田新飛行ルート問題などについて質問しました。