都民の命、健康に関わる大問題

2019年10月3日

来年3月実施 羽田新飛行ルート 白石たみお都議に聞く㊤
「都は住民を守る責務果たせ」

 羽田空港の機能強化をめぐり、住民の命と暮らしは、重大な危機に直面しています。これまで認められなかった都心の低空飛行を解禁する「新飛行経路」です。国は住民が心配する騒音による健康被害や航空機からの落下物の危険へのまともな対策もないまま、新経路を決定し、来年1月には実機によるテスト飛行を強行する予定です。この問題を追及する日本共産党の白石たみお都議(品川区選出)に聞きました。 

「撤回まであきらめない」

 問題のそもそもは、安倍政権が推進する“観光立国”の名のもとで進める、羽田空港の機能強化です。2020年までに訪日外国人年間4000万人の実現を掲げ、そのために羽田空港の国際線発着枠を年間約4万便増やすとしています。この増便実現のため、これまで原則として行えなかった、都心の超低空飛行を解禁する「新飛行経路」を実施しようとしているのです。実施されれば、23区の約7割の上空を飛行することになり、生命、健康、財産に関わる都政の大問題です。
 幅広い住民による反対運動が広がり、品川区議会では今年3月、反対決議が全会一致で採択され、渋谷区議会でも計画の見直しを強く求める意見書が採択されています。都民や地元区議会から強い反対や容認できない意思表示が行われているのです。
 こうした世論や運動を国も都も無視できず、新飛行ルートの実施は「地元の理解と協力が前提」としてきました。ところが国土交通相は8月8日、新飛行ルートの2020年3月29日からの運用開始を決定し、小池百合子知事がこれに同意し感謝するコメントを発表しました。9月議会で都として地元の理解が得られていると判断した根拠をただしましたが、「国が理解したと判断した」と、国の言い分を繰り返すばかりでした。
 「住民の命と健康を守る」という自治体としての都の最大の責務を投げ捨てるものと言っても、私は過言ではないと思っています。

健康被害をもたらす騒音

 国や都が隠したりごまかそうとしてきた、新飛行ルートの深刻な危険性が、この間の論戦や追及で改めて浮き彫りになっています。例えば、低空を飛ぶ航空機騒音。ただうるさいというレベルではありませんでした。
 国はどの説明会でも、飛行高度ごとの最大瞬間騒音値をコンピューター上で計算した推計値として住民に示しています。大井町駅(品川区)上空約300mでは80デシベルという推計値が示されてきました。ところが、この推計値は「晴れの日、気温25度、無風、大気圧1」という条件下で計算されたもので、実際にはそういった気象の日は、この間一日もないことが分かりました。
 実測値を国交省に求めたところ、江戸川区の測定局上空、約900m(着陸時)の最大騒音レベルは78.1デシベルという資料が出てきました。国が説明してきた同地点での推定値よりも8デシベルも上回る結果です。
 8デシベルの差というのは、音の大きさでは6.4倍の違いに相当し、「掃除機の音」との説明が、実は「ゲームセンターの店内」に匹敵する騒音であることが分かったのです。さらに高度を下げた大井町駅上空では「パチンコ店内並み」の90デシベル近い騒音が降り注ぐことは、容易に想像できます。
 騒音の健康への影響は、欧州WHO(世界保健機構)が示した航空機騒音ガイドラインを大幅に上回るもので、睡眠障害や脳卒中、心臓病を引き起こす要因になると指摘されています。日本の環境基準は、世界から半世紀も遅れています。
 国は騒音軽減のための「追加対策」を示しました。着陸時の進入角度を標準の3度から3.5度に、より急角度にするものです。しかし、パイロットや航空専門家からは、着陸の難易度が上がり、着陸のやり直しが増えるなど騒音リスクが逆に増大することや、尻餅事故などの危険性が指摘されており、解決策とはとうてい言えません。

1日1件以上の落下物の危険
 航空機からの落下物は、国内の主な7空港だけでも、年間447件、一日に一度以上も起きています。それに加えて、着陸時には機体に付着した氷の固まりの落下があります。落下物は完全に防ぐことはできないのです。危険性は明らかです。
 国はチェック体制を強化するといいますが、国内で1日わずか3機程度、しかも他国の空港から飛来する国際便の航空機のチェックはできません。あとは、落下物による被害補償という、事故後の対策でしかありません。(次号に続く)