東京外環道 巨大工事、地上に異変

2019年2月12日

酸欠気泡に続き、中州発生
 (1面より)住宅密集地の真下を巨大地下トンネルで結ぶ東京外環道工事で、工事個所の地上に流れる野川(世田谷区)の大正橋付近に昨年11月、突然、中州が出現。周辺では異変が相次いでおり、「工事の影響では」との不安が広がっています。(菅原恵子)

「川底隆起の可能性も」
 住民が撮影した写真によると、中州は次のように「成長」してきました。
〇11月11日、水面に少量の石が出現。
〇14日、石の量が増える。
〇25日、なだらかに地表が隆起。
 現在はその面積がさらに増しています。
 野川の同付近では6月に、人が生きていられないほどの酸素濃度1・5~6・4%の「酸欠気体」の気泡も発生しています。(東京民報18年10月21日号1面)
 不安に感じた住民が12月15日、住民説明会(世田谷区)の席上で質問したところ、国交省外環道事務所の大胡賢一計画課長は「野川の水量の低下」と説明しました。

水位の低下はない
 しかし、住民は世田谷区が公表している雨量・水位情報を確認。酸欠気泡が発生した6月13日と、中州の写真が撮影された11月25日の午後3時それぞれを比較すると、中州付近の大正橋での観測水位は6月はマイナス4・44㍍、11月の水位はマイナス4・45㍍であり、その差は1㌢しかありません。また支流の清水川は昨年6月に水流が戻っていましたが、再度干上がってしまいました。
 これまで、国・事業者・施工者らは一貫して「シールド工事では地上に何の影響もない」と説明してきましたが、住民から「工事の影響ではないか」と不安の声が上がっています。およそ10年に渡り野川流域連絡委員として都の委嘱をうけて、環境を見守ってきた金子秀人さん(71歳)は「これまで、野川に気泡や中州が出たことはありませんでした。工事の影響で、川底が隆起した可能性も否定できません。国・事業者・施工者の責任で調べて公表すべき」と話しています。

地盤にぬかるみも
 他にもおかしなことが起きています。大正橋から100㍍ほど離れた賃貸マンションでは、昨年8月から建物脇の地盤がぬかるんで穴が開き、土が白濁して植物が枯れました(写真)。12月21日にオーナーは給排水設備事業者に依頼して、土を掘り返して故障を点検したところ、土は乾いており漏水がないことが明らかになりました。
 しかし25日には再び、土壌のぬかるみが出現したために、外環の工事現場事務所に連絡。担当者が調査で来訪後の1月10日、担当者は「NEⅩCO中日本と相談した結果、他からは1件も通報がない。工事現場から離れているために関係ないと結論付けた」と一方的に調査データも示さずに通告してきました。オーナーは「外環道工事の影響がないのであれば、きちんとした調査結果のデータに基づいて文書で通知すべきだ」と話しています。
 首都高速横浜環状北線の地下トンネル工事では、2015年に400㍍離れた場所で地盤沈下が出現。現在、補修工事が行われている最中です。
 1月に行われた住民説明会(練馬区)で説明員は、「(酸欠気泡に関しては)外気で希釈されるので安全」と根拠も示さずに強弁。一方で「地下室や井戸、過去の宅地造成や温泉発掘などの掘削調査の情報を寄せて欲しい」と呼びかけています。事故を危惧しているととれる発言に、住民の不安は増すばかりです。