国保料滞納の強引徴収 〝差押え奨励金〟の記述削除 東京都

2019年2月8日

 東京都が国民健康保険料(税)の「収納率向上に関わる取組成績別交付算定表」から、「差押件数による交付」「差押割合による交付」「資格証発行割合による交付」の記述を、昨年11月に削除していたことが分かりました。
国保料(税)滞納者への厳しい取り立てを事実上奨励してきたもので、都民団体や共産党都議団は繰り返し廃止を求めてきました。都民運動と共産党都議団の貴重な成果です。

運動と論戦の成果
 これらの記述は、国保に関する都から区市町村への交付金の要綱に記載されていました。国保料滞納世帯の財産の新規差し押さえ件数や、滞納者から国保証を取り上げて窓口で全額自己負担となる資格証明書の発行した割合などに応じて、交付金を出す制度。
最近では年10億円を超える予算を同制度に使っています。区市町村に徴収強化を競わせることになるもので、他の道府県にはほとんど見られません。

 この制度があることで、区市町村を国保料(税)が高すぎて払いたくても払えない滞納者の生活実態を無視した強引な徴収に向かわせています。例えば、ある居酒屋経営者は、アルバイトに払う給料専用の預金口座が差し押さえられました。5000円ずつ毎月分納していた人は、区の担当者が変わった途端「住宅ローンを払って資産形成しているのだから、住宅ローンと同額を分納に回せ」と、住宅ローンより優先して国保料を納めるよう迫られました。
 共産党都議団が調査した区部と多摩の53区市町村のうち、年金が振り込まれる口座と知った上で預金を差し押さえしているのは40区市町に上り、そのうち最低生活費(本人月10万円、家族1人につき4・5万円)を残さずに差し押さえを行っているのは26区市町もありました(17年度)。都内全体で滞納による差押件数は、2万7183件、78億2949万482円(17年度)に上っています(2面に表)。

 本来、差し押さえの根拠としている国税徴収法では、最低生活費は差し押さえてはならないとしており、違法とも言える取り立ても広がっていることが浮き彫りになりました。
 共産党の和泉なおみ都議は、都議会でこうした事例を繰り返し取り上げ、厳しく追及。17年3月の予算特別委員会では「給与や年金を情け容赦なく差し押さえすることを、よりによって都があおるように差し押さえに応じた交付金を出していることを、知事はどう思うか」と小池百合子知事を直接ただし、要綱からの削除を求めました。
 国保料(税)の負担軽減や行き過ぎた強引な徴収はやめるよう運動を進めている東京社会保障推進協議会の寺川慎二事務局長は「運動の成果です。対都交渉をはじめ、都議会、国会で共産党が繰り返し追及してきたことが世論をつくり、削除を拒んできた都を追い詰めたのではないでしょうか。引き続き国保料(税)の引き下げや強引な徴収が行われないよう運動を強めたい」と話しています。
(長沢宏幸)

問題多い国保行政 抜本改善に取り組む和泉なおみ都議の話
 今回の変更は、共産党が繰り返し求めてきたものであり、世論と運動が都の国保行政を動かした重要な改善です。同時に、国保料(税)値上げにつながる一般会計からの繰り入れの削減を区市町村に求めていることをはじめ、都の国保行政は引き続き問題が多く、抜本的改善に向けてさらに取り組んでいきます。