新ルートは「飛行制限」違反 川崎石油コンビナートの上空

新ルートは「飛行制限」違反 川崎石油コンビナートの上空
 
羽田低空飛行ルート 防災そっちのけの計画
 航空機からの落下物が相次ぐなか、川崎石油コンビナート上空の新飛行ルートをめぐって、国(国土交通省)は川崎市に自ら約束したコンビナート上空の「飛行制限」に違反することがわかり、問題になっています。コンビナート防災そっちのけの飛行経路に批判の声が上がっています。
 国の計画によると、2020年までに南風の時は毎日、午後3時から7時までの間、一時間当たり20機、最大80機が石油コンビナート上空を低空で飛ぶことになります。
 国はこれまで、「原則として川崎石油コンビナート上空を避け、適切な飛行コースをとらせること、それ以外の航空機については3000フィート=914㍍以下での飛行をおこなわせない」と、川崎市に約束し、順守してきました。
 この飛行制限は、1960年代から70年代にかけて空港周辺で航空機事故が相次いだことから、川崎市長と市議会が1970年7月、川崎市臨海部の安全確保を当時の運輸相に要望。東京航空局長が70年11月に回答し、東京国際空港長に「飛行制限」を指示した文書も添付しています。
 ところが、国は「原則」をなし崩しにしようとしています。すでに早朝に3便がコンビナート上空を飛んでおり、原則違反です。それに加えて、危険回避などの極めて限定された場合以外は914㍍以下とする「飛行制限」にも違反することが判明しました。
 
共産党議員の追及で
 昨年6月の川崎市議会で佐野仁昭市議(共産)は、ボーイングイン777が滑走路から飛び立った時の経路と高度をインターネットサイト「フライトレーダー24」で調べたところ、「千鳥町を過ぎてようやく914㍍になる。これはそもそも飛行制限自体に違反している」と指摘しました。
 そのうえで、「これまで国は914㍍以上を確保してコンビナート上空の新ルートを提案していると聞いていた」とのべ、「本当にでたらめな説明を受けていたことになる」と強く批判。市長に対し「石油コンビナート上空を低空飛行するルートは認められない」と国に伝えるよう要望しました。
 
「新飛行ルートは撤回を」
 川崎石油コンビナートは、産業道路から海側とされているのに対し、川崎市の説明図でも、飛行経路は、産業道路より海側にひかれています。滑走路から2㌔㍍の地点にある小島町付近で飛行高度約450㍍と記されています。その周辺を歩いてみると、高圧ガス製造工場や石油関連の工場群が立ち並んでいます。
 国から市への回答では「できる限り早く旋回し、高度を上げて海側に抜ける運用に努める」としています。
 佐野氏は昨年12月の代表質問でも、「できる限り早く旋回する」とか、「高度を上げながら海に抜けていく」といっても、石油コンビナートを通過するということだと指摘。「最良上昇率をとる以上は千鳥町付近までは3000フィート(914㍍)を下回る」ことには変わらないと批判しました。加えて「いずれも、国が示した『飛行制限』を破る理由」にはならない」と指摘し、飛行ルート案は撤回させるべきだと市長に迫っています。市側は「これまで明確な回答はない」とし、「引き続き、より具体的な対応について、国に求めていく」と述べるにとどめています。
 佐野氏は「石油コンビナートにはさまざまな危険物があり、劣化ウランの貯蔵所まである。航空機の落下物や事故があれば、大災害につながるので、関係者は防災に心を砕いています。新ルートは、こうしたコンビナート防災を軽視し、国が自ら決めた『飛行制限』を明確な理由も示さずほごにするものです。市長も明確な態度をとるべきです」と強調しています。
 
「飛行制限」覆すな 山添拓参議院国土交通委員(共産党)の話
 1970年に東京航空局長が指示した川崎石油コンビナート上空の「飛行制限」は、現在に至るまで変更も撤回もされていません。指示文書は、羽田空港を発着するすべての航空機について、コンビナート上空の飛行を制限しています。事故等が相次ぎ、川崎市や消防庁から懸念が表明されたのを受けた対応で、当然の措置です。現在この地域を旅客機が飛行するのは、ゴーアラウンド(着陸のやり直し)が必要な場合などごく限られています。
 新飛行ルートは、日常的にコンビナート上空を飛行させる計画で、「飛行制限」を正面から覆すものです。国交省をただしたところ、安全確保の方策や新ルートを飛行する航空機の運用は、「検討中」といいます。住民や関係者の合意もなく、増便ありきで危険な新ルートを認めさせるわけにはいきません。(松橋隆司)