「多喜二の変革の意思と実行を学ぼう」生誕115年・没後85年~東京で多喜二祭開く

侵略戦争反対と人間の尊厳を求めてたたかった日本共産党員作家・小林多喜二の生誕115年・没後85年を記念する「杉並・中野・渋谷 第30回記念多喜二祭」が12日、東京都中野区で開かれ、1200人が参加しました。

多喜二が学んだ小樽高等商業学校(現・小樽商科大学)教授の荻野富士夫氏が「小林多喜二の生きた時代と現代―『我等(われら)何を、如何(いか)になすべきか』―」と題して記念講演をしました。

多喜二の文学や活動などを考えた多喜二祭に参加する人たち=12日、東京都中野区
多喜二の文学や活動などを考えた多喜二祭に参加する人たち=12日、東京都中野区
講演で荻野氏は、多喜二の作品を貫く思想と視点を著作や資料を示し解明。
資本主義による労働者の搾取の実態の暴露や戦争のカラクリを暴いた足跡をたどりました。

多喜二の時代を把握することは安倍政権の新たな戦時体制の構築に対峙することにつながると強調。作品から多喜二の変革の意思と実行を学びとることが重要だと述べました。

精神科医で立教大学教授の香山リカ氏も「多喜二と私と若者と」と題して講演。
「(暗黒の)時代がまた戻ってきている」と指摘し、「とにかく口をつぐまない。声を一緒に上げたい」と話しました。

俳優の津田恵一氏が「党生活者」を朗読。歌手の岸本力氏が歌を披露しました。

市田忠義副委員長が出席し紹介されました。

日本共産党の小池晃書記局長が連帯あいさつ。

連帯あいさつする小池晃書記局長=12日、東京都中野区
連帯あいさつする小池晃書記局長=12日、東京都中野区
小池書記局長は小林多喜二を「個人の尊厳を押しつぶす社会の矛盾を文学の力で告発し、不合理な現実を変えるため、たたかいに立ち上がる人々を描いた日本共産党員作家」と紹介。

29年の短い生涯に残した作品のうち、小池氏は特高警察の拷問によって命を奪われる直前に書いた、『沼尻村』『党生活者』『地区の人々』の3作品を取り上げました。

時代背景は1931年、満州への侵略戦争が始まり「戦争が本格化すればもっと景気はよくなる」と政府が宣伝する「戦争特需」の時代。

これらの作品群は「反戦平和と反ファシズムを訴えてたたかう人々を描き、今日の情勢から見ても、迫力と輝きを放っています」。

時空を超えて私たちの胸打つ

『沼尻村』は戦時体制に組み込まれた農村の実情と、その中での反戦運動を描いた作品。

続いて書かれた『党生活者』もガスマスクやパラシュートを作る軍需工場を舞台に反戦闘争を展開する共産党員を描いた作品。

最後の作品となった『地区の人々』も北海道の港町の鉄工所を舞台に、反戦平和・生活擁護のたたかいをすすめる労働者と、産業界を戦争翼賛の流れにのみ込むため工場に派遣されてきた軍関係者との、たたかいの“綱引き”が描かれています。

3作品に共通する、「戦争で景気がよくなった」などの宣伝を振りまき戦争推進の流れに国民を絡めとろうとする当時の権力の姿は「まるで、今の安倍政権のようだ」と小池書記局長は指摘しました。

「国民生活や経済の実態には目もくれず、『アベノミクスで経済がよくなった』と叫びながら、9条改憲に突き進もうとする、安倍内閣の姿をほうふつとさせるではないか」と強調。

「戦前の暗黒体制のもとで、『戦争反対』の声を上げ戦争推進勢力のウソを暴き、奮闘する、多喜二の作品の登場人物たちの姿は時空を超えて、私たちの胸を打つものがある」と評しました。

多喜二の訴えは実現しつつある

続いて小池書記局長は、多喜二が1932年10月24日、日本プロレタリア文化連盟(コップ)創立1周年に際して書いた「闘争宣言」を引用しました。

「きたるべき革命が『ブルジョア民主主義革命』として広範な層を含むものであるがゆえに(中略)あらゆる問題をとらえての下からの『統一戦線』の戦術の適用によって、全革命的民主主義的勢力を吸集すること等々が実践されなければならぬ」――。統一戦線を呼びかけたものです。

しかし当時は、統一戦線は実現できませんでした。
小池書記局長は「私たちが生きる今の時代は、多喜二の時代とは大きな違いがある」と指摘しました。

多喜二没後85年の今は、当時と何が違うか――。
小池書記局長は二つの点を強調しました。

一つは、多喜二の時代は非合法政党だった日本共産党が公然と活動し、2,700人を超える地方議員、衆参合わせて27の国会議席を持つ政治勢力となっていることです。日本軍国主義の敗北と日本国憲法の制定、その後の民主主義発展の努力を受け、そうした公然たる思想弾圧は過去のものとなりました。

もう一つは、多喜二が呼びかけたような民主主義的勢力の統一戦線、すなわち平和・民主主義・立憲主義を守り、安倍政権の戦争国家づくりに反対する「市民と野党の共闘」が実現しつつあることです。

「オール沖縄」の共同の実現や、安保法制=戦争法に反対する空前の市民の運動を受け、新しい共闘がつくられ発展しています。

日本共産党を強く大きく

「もし、多喜二が現代に生きていたら、この成果を大いに喜び、戦前とは比べものにならない、可能性と展望に満ちた現代のたたかいを生き生きと小説に描き、社会変革の活動にまい進したのではないでしょうか」と問いかけた小池書記局長。

「再び戦争への足音が耳元で聞こえる情勢の中で、多喜二のように声を上げ、多喜二のようにたたかいましょう。この党を強く大きくすることに、日本の未来はかかっています。戦後最悪の安倍政権を一日も早く打倒しましょう」と結びました。

(2月13日付「しんぶん赤旗」より)