不破哲三前議長の訴え(要旨)を紹介します

総選挙での日本共産党躍進と大激戦の東京12区での池内さおり候補(東京比例重複)、東京20区での宮本徹候補(東京比例重複)の必勝を何としてもと、不破哲三前議長を迎えた街頭演説が13日・15日に行われました。不破前議長の訴えの要旨を紹介します。(文責は日本共産党東京都委員会にあります)。

◆ 13日の東京12区街頭演説の報道記事はこちら


不破哲三前議長の訴え

みなさんこんばんは。日本共産党の不破哲三でございます。

《世界の流れは核兵器廃絶へ》

みなさん。選挙戦が中盤に入ろうとしています。選挙の直前に、世界から日本の国民に大変すばらしい贈り物が届けられました。核兵器廃絶を目指して運動してきた国際組織・ICANがなんとノーベル平和賞をもらったんです。7月には核兵器禁止条約が採択された、10月にはこの運動にノーベル平和賞が授与された、本当にこの年は、日本国民にとって素晴らしい年になったのではないでしょうか。核兵器廃絶という日本国民の願いが、まさに世界の政治と世論を動かす大きな流れ、中心の流れになったんです。

ではみなさん、日本の政治はどうでしょうか。まったく様子が違っています。この国連の会議に参加した日本の政党は日本共産党だけでした。私たちは、志位和夫委員長を代表とする代表団を国連に送りました。そして、日本の被爆者団体と一緒に討論に参加し、みんなで協力して努力しました。条約が採択された日は、122か国の政府代表と一緒になって、国連の会場でこの条約の採択を大いに祝ったものでした。

みなさん、先ほどお話にもありましたが、日本共産党は侵略戦争に反対する平和の旗を命がけで掲げて、最後まで守り抜いた政党です。その伝統と歴史を現在の世界に生かしたのが私たちの行動だったと、誇りに思っています。

では、日本の政府はどうでしょう。国連の会場で日本政府の席は最後まで空席のままでした。それからノーベル平和賞授与についても、とうとう一言のコメントも発表しませんでした。恥ずかしい話ではないでしょうか。みなさん。こういう政府は、もうそろそろおしまいにして、国民を代表する政府、核兵器禁止条約に堂々と署名する政府に変えていく大きな道を、みんなで作っていこうではありませんか。

《かつての自民党は野党の国会論戦に応える幅があった》

私はこの50年間、自民党と論戦をしてきました。もちろん私たちと立場が根本から違う政党です。しかし以前の自民党は、自分たちが今やっていることの間違いを、ズバリ事実を突き付けて追求したら、たとえそれがアメリカとの関係の核心に関わる問題であっても、率直に事実を認め、政策を変える、そういうことを私自身何べんも経験しています。

たとえば、剛腕で鳴らした田中角栄首相です。その前から、アメリカの原子力潜水艦が日本に入ってくるようになりました。政府は「放射能を監視するから大丈夫だ」、監視体制があると言って受け入れてきました。しかし、その放射能監視のデータが、まったくインチキでねつ造ばかりしている。国会でこの事実を突きつけたら、あの田中首相が「それは大変だ」「この監視体制を全部やり直す」と約束しました。そして「新しい体制ができるまで、アメリカの原子力潜水艦は日本にいれない」ということまで約束しました。

後からわかったことですが、アメリカ政府は大変怒りました。キッシンジャー国務長官の名前で「共産党に言われて原子力潜水艦を止めるとは何事だ」「この状態は、日米安保条約の重要部分が廃棄されたと同じだ」というような、厳重な抗議の電報が何本も寄せられたということです。しかしそれでも、当時の自民党政府はそれに負けないで、新しい体制が完成するまで、原子力潜水艦をストップさせました。なんとみなさん、183日間、原子力潜水艦の日本寄港が止まったんです。“敵ながらあっぱれ”と思いました。

そのあと福田内閣という内閣がありました。東京に近い千葉県の柏市に、大きな米軍占領地があったんです。ここに米海軍の通信施設をつくる。これは日本の漁船もつかう「平和の灯台だ」というのが前宣伝でした。しかし調べてみるととんでもない。これはアメリカの原子力潜水艦の作戦を指揮する戦略施設でした。私はそのことを調べ上げて、「3000万の人口がいる首都圏に、こんな危ない戦争基地をつくるのか」と追及したら、福田首相も「事情を調べて検討する」と答弁しました。いまの政府はこういう答弁をなかなか出てきませんよ。そして調べた結果どうなったか。結局米軍と交渉して、この計画をとりやめて、占領地がまるまる日本に返還されたんです。なにしろ東京ドームの40倍ある大きな土地ですよ。それが戻された柏市には、たくさんの文化・スポーツ、住宅、商業施設があつまった、一大文化中心地が生まれたんです。

みなさん。国会の論戦で重大な事実が明らかになると、たとえ日米の軍事同盟の核心に関わる問題でもこういうことをやる、少し前の自民党政府にはそれだけのことをやるゆとりと幅がありました。

《問答無用の安倍暴走内閣に、きっぱりとした審判を》

しかしみなさん。今の自民党はとんでもないでしょう。いま沖縄の問題があります。ヘリコプターが墜落して、あわや惨事がおこるところでした。しかしどんなにヘリコプターが落ちても米軍にまともに文句を言おうとしない。辺野古基地にあれだけ県民が反対しても、アメリカの要求通り建設を続ける。まさに、“問答無用”であらゆる問題をおし通しているのが今の安倍内閣ではないでしょうか。

中でも問題は、憲法の問題です。自民党綱領には、党ができた最初から、たしかに「憲法の改定」とは書いてあります。しかしみなさん。安倍内閣以前の内閣は、そうは書いてあっても、今生きている憲法を正面から踏みにじることはやはり遠慮してきたんです。

ところが安倍内閣はどうでしょう。まず、特定秘密保護法というのをつくって、日本の政治の真相を国民の目からふさぐ、こういう暴挙をやりました。次に安保法制・戦争法というのをつくって、このためには歴代自民党政府がずっと認めてきた憲法解釈も、いっぺんで投げ捨てて、これを押し通しました。それまでも、日本には海外派兵の法律を何本もつくった政府はありました。しかしその時も、憲法9条を守らないわけにはいかない。だから法律には自衛隊は派遣先で「武力の威嚇は行わない」「武力行使はしない」、つまり憲法9条の範囲内で行動するということをきちんと「基本原則」として書きこんだのです。安倍内閣はそれを今度の海外派兵立法・戦争法からとり外しました。「さぁ自由に海外で戦争行動してください」、こういう道が開かれたんです。

最後に、そういう無法に反対する国民の行動をおさえるために、今度は国民の心の中まで政府と警察が監督する、監視する「共謀法」を、国会で押し通しました。国連の担当者が「これは大問題だ、間違いだ」という意見を出しましたが、受け付けませんでした。まさに、安倍内閣のもとで、日本は、社会全体を重苦しい空気が支配したあの戦前まがいの状態に、今ますます入りこもうとしているんです。

こういうことをみなさん、絶対に許すわけにはいかないじゃないですか。今度の選挙には、こういう安倍暴走内閣に対して、きっぱりした審判を下そうではありませんか。

《北朝鮮問題――「戦争に絶対にさせない」が中心問題》

北朝鮮の問題でも、ただいま山口さんが言われたとおりであります。もちろん北朝鮮が核武装するのは、アジアにとっても日本にとっても世界にとっても大変重大な問題です。だから私たちは国連決議を中心に経済制裁を進めることは大賛成です。しかしこの問題では「絶対に戦争を起こさせてはならない」、これが腹の底から考えないといけない中心問題じゃないでしょうか。戦争になれば、まさに日本も東アジアも世界も大破綻になります。

ところがみなさん。安倍内閣は、そういうことを頭の中にひとかけらも考えていません。世界の多くの国々、国連も、この問題では戦争を絶対に起こしてはならない、だから軍事的制裁はやらない、経済制裁で問題を平和的外交的解決の道に進めていこう。これが国連決議の精神なんです。

それに対して、ただ一人、別のことを言っている人がいる。それがアメリカのトランプ政権です。「私のテーブルの上にはどんな選択肢も用意されている」と彼は発言しました。この中には明らかに、軍事的な攻撃、先制的な戦争が入っています。世界ではこの発言に賛成した政府の首脳は誰もいませんでした。ただ一人、安倍首相が全面的に賛成しました。安倍首相の外交はこういうものなんです。

そしていま、アメリカはすべての選択肢がテーブルの上にある、これを実行するために海軍や空軍を動員して、朝鮮半島の近辺で軍事的に相手を脅かす演習をやっているでしょう。そこにみなさん、安保法制で日本の自衛隊がはじめから参加しているんですよ。こんな危ないことはないじゃありませんか。

日本は憲法9条を持っている国です。こういう危険な政策をやめて、そして政府自身が平和の精神に立って米朝対話を促進し、問題を平和的解決の軌道に戻すためにあらゆる努力をはかる、これが憲法9条をもった日本が当然やるべき、北朝鮮問題の政策ではないでしょうか。

《財界言いなりで「消費税は増税、法人税は減税」――逆立ち税制にストップを》

経済問題でも、大変問題があります。安倍首相は消費税を10%に引き上げる、そういうことを今度の選挙の大公約にしました。

しかしみなさん。消費税とは、いったい誰が、何を目的にして言い始めた税制なのかご存知でしょうか。だいぶ前、中曽根内閣のころですが、「日本に消費税を入れよう」こういう提案を決定したのは、財界団体である経団連でした。それで経団連の使者が政府に何べんも何べんもきて、1年がかりで政府を説得しました。はじめは中曽根内閣も首をひねっていました、渋い顔をしました。しかし最後に財界の言い分に負けて、じゃあ政府がやろうと腹を決めました。経団連がその報告を聞いて喜んで凱歌をあげた、そのことがちゃんと記録に残っています。

財界・大企業は何を目的にして消費税を提案したのか。日本の財政を豊かにするためではありません。財界・大企業が主に負担している法人税を引き下げることが、目的でした。

それを実行したらどうなったか。結果はまさに、財界が望んだとおりになりました。消費税の方は3%で始まりました。その時の税の総額は3兆3000億円でした。今では税率8%、今年の税収見込みは17兆円を超えています。こちらの方はどんどん膨れ上がるんです。では、大企業・財界の法人税負担はどうか。その時の同じ期間に、税率が42%から23%台まで、ほぼ半分に減りました。まさに、財界が望んだとおりになったんです。

そうして、財界の税金を減らしてやったことが、日本経済の役に立ったのか、日本国民の役にたったのか。実はこうして増えたもうけを、財界・大企業は経済に使わないで、どんどん貯金として貯め込んでいるんです。貯め込んだ額を「内部留保」と言いますが、安倍内閣の始まったころ、貯め込み額は333兆円だったものが、5年たった今ではついに400兆円を超えるところまできました。

いま、日本では、格差と貧困が大問題になっています。その時に、消費税を10%に引き上げる、財界大企業のもうけは大目に見る。まったく乱暴な話ではないでしょうか。今こそ、財界いいなりの逆立ち税制にストップをかける時ではないでしょうか。

もし、いまの税制をお金持ち層や財界に応分の負担を求める民主的なルールに改めたならば、みなさん、いま安倍さんが言っている国民の教育費負担を無償にすることなど、すぐさま財源は出てきます。それどころか、国民生活と日本経済を改善する大きな改革が、十分な財源の裏付けをもって実行できる、新しい道が開けるのであります。

《「希望の党」小池代表自身が“自民党と根本部分で違いはない”》

さて、その安倍内閣が迎える今度の選挙。政界の様子はどうでしょう。選挙の直前に大変動がありました。マスコミではこの変動を「3つの極ができた」「3つの極の争いだ」という3極論が盛んでありますが、私はこれは大変な間違った見方だと思います。希望の党は、自民党政治の補完勢力、言葉を変えて言えば“別働隊”です。安保法制も憲法9条改正も、あの変動のときに、希望の党入りをする踏み絵にちゃんと書き込んでいるではありませんか。

先日の党首討論会で志位さんが小池代表ご当人に「希望の党の政策で、自民党の政策の根本部分とどこが違うのか」と聞いたことがありました。小池さんの答弁はこうです。「私は安倍内閣で防衛大臣まで務めた人間です。その人間が、自民党の政策と、根本部分で違いがあったら、自分の役割を否定することになります」。ご当人がこう言っているんですよ。まさに、自民党と同じ立場に立っている党だということの、まぎれもないご当人自身の告白ではないでしょうか。

《市民と野党の共闘こそが政権の「受け皿」》

今の政界では、一方には、自民・公明・希望、自民党政治を推進するこういう勢力、自民党的・準自民党的勢力があります。これに対して、日本の政治を本気で国民の手に取り戻そうというのが、「市民と野党の共闘の勢力」であります。この共闘は、一昨年の安保法制反対の国民的闘いの中で、「野党は共闘しろ」という国民のみなさんの声に押されて生まれました。昨年の参院選挙では一人区だけの共闘でしたが、その共闘で11選挙区で自民党を見事に打ち破ったではありませんか。こんどの選挙では色々ありましたが、共闘が文字通り全国規模に広がっています。

選挙になると、政権の「受け皿」はどうなんだとよく問題になります。しかし「市民と野党の共闘」これこそが、まさにその受け皿であります。まだ誕生して2年余りの若い共闘ですが、私たちはこの共闘がいろんな試練を受けながら成長発展して、一握りのお金持ちや大企業のための政治ではない、99%の国民の利益を守る新しい政権の母体となることを確信しています。

そして、この共闘の成立と発展のために、日本共産党があらゆる努力を尽くしきたし、今も尽くしている政党だということは、先日の大変動の中での私たちの態度を見てもわかって頂けることだと思います。

《共産党との共闘を批判する前に、ぜひ日本共産党綱領を読んでほしい》

みなさん、市民と野党の共闘を批判する人たちは、「共産党とは綱領が違うはずだ」、「そういう党と共闘するのはおかしいじゃないか」、とよく言います。しかしこういう人たちは、日本共産党の綱領を読んだことがあるんでしょうか。たとえば憲法の問題でも、そこには憲法の「前文を含む全条項を守る」とはっきり書いてあります。日本の政党の中で、こういうことを明確に綱領に書き込んでいる党は私たちの党しかありません。

もちろん私たちの綱領は当面の問題だけじゃない。日本国民全体の将来の姿、日本社会の発展の大きな将来展望を書いています。それは、社会から格差と貧困がなくなり、平等と自由をすべての国民が謳歌できる、そしてすべての人間が自分の能力を思う存分発展させる機会と条件をもつ、そういう社会です。これが私たちの未来社会の展望です。ソ連式や中国式の社会ではない。社会主義の本当の姿はここにあるのです。

その未来社会に進むには、日本国民全体の意思と努力で、改革を一段一段、一歩一歩進めていく長い過程が必要になるでしょう。どの一段を進む時にも、日本国民の合意、支持と納得が大事。それがなければ前に進めない。そのこともちゃんと私たちの綱領には明記してあるんです。

だからこそ私たちは、今の問題で、国民にとって重要な問題で一致があるならば、綱領の違う政党、考え方が違う政党とも、いろんな見方考え方を持っている方々とも、本当に心をひとつにして共闘できる、そういう精神がここにあります。

《市民と野党の共闘は「世界に共通する国民運動の原則」》

こういう共闘はこんにちの日本だけの問題ではありません。世界のすべての国の国民運動に共通する、統一戦線の原則中の原則だと私は思っています。昔、第二次世界大戦のときに、ヨーロッパがヒトラー・ドイツによって攻撃され占領されました。その時にフランスの宗教会のある方が、「神を信じるものも信じないものも」団結してヒトラーの侵略と闘おう、こういう声をあげました。これがヨーロッパの反ヒトラーの抵抗運動=レジスタンスの精神となったんです。

安倍独裁というウルトラ右翼の暴走によって、国民の生活と日本の平和、憲法と民主主義が根本から脅かされている今日、日本社会に何よりも必要なのはこの精神ではないでしょうか。日本共産党はこの精神をもって、市民と野党の共闘が発展し、それが日本の政治の担い手となることをめざして、あらゆる努力を尽くす覚悟でいます。

《東京12区 公明党を打ち破り、池内さおり候補を国会へ》

池内沙織候補は、当選以来3年、国会で池内さんならではの独特の大きな活躍してきた、みなさん方の代表です。池内さんを推す方がどんどん広がっています。“さおりおす”というバッチ、私も今日付けてきていますが、こういう声が大いに広がっている。この選挙区では、自民党勢力を代表しているのは公明党です。公明党を打ち破って、どうか池内さんに、今度はこの12区の代表として、国会に送り出してください。このことを心からお願いするものであります。

《比例代表で日本共産党の躍進を》

そしてまた、比例代表選挙では日本共産党をお願いしたい。日本共産党が比例で大きな得票を得て、大きな議席を持ってこそ、市民と野党の共闘のさらに大きな柱になれる。そしてまた、池内さんが、国会で活躍する舞台もさらに大きく広がるんです。

みなさん。国民こそが日本の政治の主人公です。みなさんの一票一票が新しい政治を開く強い力になります。どうか、みなさん方の力で日本の政治の新しいページを開いて頂きたい。そのためにも12区では池内さおりさんの当選を、そして比例代表では日本共産党の躍進を、どうか心からお願いしてご挨拶とさせていただくものです。どうも雨の中、ありがとうございました。よろしくお願い致します。


※不破哲三さんは、東京20区では、宮本徹候補の必勝の訴えを行い演説を結びました。

《東京20区 宮本徹候補の必勝を》

宮本徹候補は当選以来3年、安倍首相との論戦をはじめ、本当に大きな仕事を国会でされてきました。その宮本さんが、今度はこの選挙区の候補者として、この選挙区の代表として、国会で働けるように、宮本さんに応援を願いたい。

《比例代表で日本共産党の躍進を》

そしてまた、比例代表選挙では日本共産党をお願いしたい。日本共産党が比例で大きな得票を得て、大きな議席を持ってこそ、市民と野党の共闘のさらに大きな柱になれる、そしてまた宮本さんが、国会で活躍する舞台もさらに大きく広がるんです。

みなさん。国民こそが日本の政治の主人公です。みなさんの一票一票が新しい政治を開く強い力になります。どうか、みなさん方の力で日本の政治の新しいページを開いて頂きたい。そのためにも20区では宮本徹さんの当選を、そして比例代表では日本共産党の躍進を、どうか心からお願いしてご挨拶とさせていただくものです。どうも雨の中、ありがとうございました。よろしくお願い致します。