《カジノ法案》審議6時間で採決強行
賭博解禁 社会悪そのもの/池内議員が反対討論

2016年12月3日 ,
反対討論する池内さおり議員=2日、衆院内閣委
反対討論する池内さおり議員=2日、衆院内閣委

刑法が禁じる賭博場=カジノを合法化するカジノ解禁推進法案が2日、衆院内閣委員会で日本共産党や民進党が強く反対するなか、自民、維新と、公明の一部の賛成で強行可決されました。委員会審議が行われたのは、わずか2日間、約6時間だけです。

池内さおり衆院議員の反対討論

日本共産党の池内さおり議員が2日の衆院内閣委員会で行ったカジノ解禁推進法案に対する反対討論(要旨)は次の通りです。


本法案は「特定複合観光施設(IR)の整備」をうたいますが、本質は日本で許されなかった民間賭博=カジノを解禁しようというものです。

刑法は、刑罰をもって賭博を厳しく禁じています。「国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風を害」し、「国民経済の機能に重大な障害を与える恐れ」(1947年11月22日、最高裁大法廷判決)があるからです。これをくつがえすカジノ解禁は許されない暴挙です。

社会悪もたらす

カジノ解禁は何をもたらすか。暴力団の関与、マネーロンダリング、周辺地域の治安の悪化、ギャンブル依存症の多発、青少年への悪影響など、社会悪そのものです。提案者もリスクの発生を否定できませんでした。さまざまな対策を講じるためには莫大(ばくだい)な社会的費用を必要とします。カジノ事業者のもうけのために、社会悪を発生させ、莫大な公費を使う、これほどばかばかしい法案を私は他に知りません。

提案者は「カジノによって夢のような経済効果がある」といいます。しかし、シンガポールの例を繰り返すだけ。IR方式の施設の破綻は世界のあちこちで起きています。経済効果は何の根拠もありません。賭博を通じて巨大なお金が右から左へと流れ、カジノの胴元に巨額なてら銭が転がり込むだけです。

暴力団など反社会勢力がカジノ利権に食い込みを図ることは、火を見るよりも明らかです。マネーロンダリングの場となることも、世界のカジノの実態をみれば防ぐことはできないでしょう。

より深刻なのは、ギャンブル依存症の拡大です。わが国には、536万人のギャンブル依存症の患者がいることが明らかになりました。慢性、進行性、難治性で、放置すれば自殺に至る極めて重篤な疾患です。新たな依存症患者を生み出すことは許されません。提案者は、カジノ収益から出る納付金で対策を講じると述べましたが、新たな発生源をつくらないことこそ必要です。

賭博には敗者が存在します。大数の法則で必ず胴元が勝つ、ここにカジノ営業の根拠があります。日弁連が行った破産調査によるとギャンブルが原因とみられる破産者は全体の5%に上ります。カジノは多重債務者を作り出さざるを得ません。官民一体で行った多重債務者対策にも逆行するものです。

青少年への影響も深刻です。家族ぐるみで出かけるIRに公然と賭博場があることは、賭博への抵抗感を喪失させてしまいます。

政府は、カジノを中核としたIRを「成長戦略」の目玉に位置付けていますが、賭博によるあぶく銭を当てにした経済政策など、あまりに不健全、経済政策の退廃です。

日本観光の未来

日本は、額に汗してコツコツと働く、勤勉な国民性に支えられて現在の経済水準を獲得しました。一人ひとりの努力によって築き上げられた世界に誇る景観、文化遺産、社会の安全、ここに日本の観光の未来があります。

「健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風」を害し、「怠惰浪費の弊風」を生じさせる本法案は決して成立させてはなりません。

(「しんぶん赤旗」2016年12月3日付より)