豊洲市場が地盤沈下 残る汚染、赤字、駐車場不足… それでも開場するのか
 東京都が開場(10月11日)を強引に進める豊洲新市場(江東区)の開場式典が13日開かれました。ところが、その2日前、市場敷地内で、幅約10㍍にわたるひび割れがあることが分かり、市場業者に衝撃が走りました。都は昨年秋に、この事実を把握していながら公表してこなかったことも明らかになりました。土壌汚染問題に続き、市場業者や都民の信頼をまたしても失う事態となり、開場中止を求める声はさらに大きくなっています。
 
 ひび割れは、水産仲卸売場棟西側の建物部分と外の舗装部分の境にあるトラックの荷下ろし場。幅約10㍍で建物との段差は約5㌢。都によると、建物周辺に土壌汚染対策で盛り土した下の粘土層が水分などを失い、徐々に圧縮されて沈下したといいます。都は「当初から沈下は想定しており、安全上問題ない」と説明。開場までに補修し、定期的に点検するので、開場に影響はないとしています。
 
 日本共産党都議団は14日、現地調査を行い、あぜ上三和子、尾崎あや子両都議が視察。同党都議団によると、他にも同じ建物の別の箇所で同様のひび割れや、建物に隣接する消火栓や排水口で、ひび割れや段差を確認しました。
 
 都は昨秋にひび割れを確認していましたが公表せず、今月8日になって、市場業者の指摘などを受けて、記者会見を急きょ開き公表。明らかにしてこなかった理由について、「市場の使用に問題はなく、現場対応ですむ」と考えたからだとしています。
 
 地盤沈下による地下水の相対的上昇の危険性については「致命的な影響がでるとは考えていない」と説明しました。
 
 視察後、あぜ上都議は「市場関係者が不安になるのは当然であり、沈下が分かった段階で説明すべきだった。都は沈下を起こりうることとしているが、どこまで沈下するかは分かっていない。都はきちんと調査し、結果を都民、市場業者に公表し、丁寧に説明すべきです」と話しています。
 
 
山積する6つの問題
 地盤沈下の事実を把握しておきながら約1年にわたりその事実を公表せず、土壌汚染対策に続き市場業者に不安と不信を招いた東京都。先に開かれた都議会経済港湾委員会(10日)では、豊洲新市場に山積する問題や不信を招く都の対応が共産党のあぜ上三和子、尾崎あや子両都議の質疑で、あぶり出されました。
 
 
その1 安全根拠説明せず
 都は豊洲新市場の汚染対策追加工事を受けて、専門家会議がまとめたとする「報告書」(7月30日)で、「将来リスクを踏まえた安全性が確保されたことを確認した」との評価を得たとして、小池百合子知事は報告を受けた翌7月31日、”安全宣言”。農林水産省の開場認可を申請しました(10日に認可)。
 
 ところが都は認可申請前に、専門家会議の「報告書」について都議会には報告せず、追加工事完了後の現地調査も認めませんでした。所管の経済港湾委員会が現地を視察できたのは、1カ月以上もたってからで、委員会で審議したのは、農水省から認可が下りた当日のことでした。
 
 10日の委員会では“安全宣言”の根拠とした専門家会議の報告書が、設置要綱に違反し、正式な会議を開かずにまとめられ、公表していたことが共産党の尾崎あや子都議の追及で明らかになりました(前号詳報)。
 
 さらに卸売市場法で定められている卸売業者、仲卸売業者、売買参加者など、利害関係者からの意見聴取は、まともに行われなかったことも明らかになりました。都が説明したとするのは業界団体の役員や団体トップで構成する卸売市場審議会や新市場建設協議会などだけです。
 
 あぜ上都議が“安全宣言”以降、市場関係者や消費者、都民に説明会を行ったかとの質問に答えるよう何度も求めましたが、答弁はありませんでした。
 
 
その2 盛り土の再汚染は
 汚染対策の追加工事完了後、都は地下ピットをマスコミに公開した際、水産仲卸売場棟の地下ピット(空間)の床にあった水染みが発覚し、地下水が染み出たものではないかとの報道が一部メディアでありました。
 
 尾崎都議は、その報道に関連して、原因は何かと質問。都は地下ピットの側壁がL型擁壁であることから、雨水が入り込みたまったものだと答弁。その水の処理はポンプでくみ上げ、地下水管理システムに送水して処理した上で排水しているとしました。
 
 そのことから、都は土中を通ってピット内に入り込む雨水が、汚染されている可能性を否定できないことによる対応であることが分かりました。
 
 地下水管理システムの破綻から、地下水位が過去にAP(基準海水面)より5㍍以上も高くなっていた日が何日もありました。そのことから共産党都議団は、盛り土が有害物資を含んだ地下水で再汚染された可能性があることを一貫して主張。調査を求めてきましたが、都は拒否し続けています。
 
 尾崎都議はピット内に入り込んだ雨水と盛り土について、汚染されていないか改めて調査するよう強く求めました。
 
 
その3 目利き消える?
 都が同市場の開場認可申請で提出した事業計画書では、水産物の取扱量が2023年度に61万6400㌧とされています。ところが、16年度の実績は43万4290㌧で、しかも毎年減少しています。尾崎都議は、「豊洲市場ではなぜ取扱量が増えるのか」と質問。都中央卸売市場の松田健次・市場政策担当部長はまともに答弁できませんでした。
 
 尾崎都議は事業計画に取扱量見込みを実現させる具体的な内容が示されておらず、現実からかけ離れていると強調。「スーパーや大型店との取引を拡大し、築地市場で行ってきた水産仲卸の目利きはなくなるという内容ではないか」とのべました。
 
 
その4 毎年100億円の赤字
 事業計画書によると事業費(土壌汚染対策費、用地取得費、建設費、基盤整備費など)が16年度までに5691億円で、企業債(借金)の返済で20年度600億円の元金償還が必要となり、22年度68億円、23年度398億円、24年度343億円、25年度には1322億円と、毎年多額の償還が必要になります。
 
 事業計画書には損益計算書などの収支の試算がありません。尾崎都議は市場問題プロジェクトチーム(PT)会議で減価償却しない場合、年間21億円の赤字になるとの試算結果をあげ、追加の汚染対策工事や、それに関わる維持費、業界からの要望による施設・設備の改善の費用などに、減価償却費を含めれば毎年100億円超の赤字になると指摘。「資金繰りが困難になることは明らかだ」と強調しました。
 
 
その5 駐車場不足が深刻
 豊洲新市場の移転で、業者から駐車場不足を心配する声が広がっています。築地市場には4710台分の駐車場がありますが、交通アクセスが築地に比べ悪く、市場業者や買い出し人らの車利用が大幅に増えることが見込まれるのに、豊洲は5100台分しか設置がないからです。
 
 あぜ上都議は「基本設計の段階から現場の声を聞かないから、直前に駐車場不足の問題が出てきている」と指摘しました。
 
 
その6 異例の低額落札
 豊洲新市場に誘致する集客・宿泊施設「千客万来」(22年12月完成予定)の開設までの間、都が行う「にぎわい創出」事業の企画内容を検討する業務について、大手広告代理店の電通が70万円という異例の低価格で落札していたことが明らかになりました。
 
 落札は8月29日に行われ、応札したのは同社を含め3社。他の2社は699万円と2000万円。あぜ上都議は、小池知事と「千客万来」を運営する万葉倶楽部(神奈川県小田原市)の高橋弘会長とのトップ会談(5月末)に、電通社員2人が秘密裏に同席していたことを指摘。
 
 「都の重要情報を入手し、これに深く関わる事業を超低価格で落札。極めて有利な立場を得たことになる。電通が事業委託を独占的に受けることにならないと断言できるか」とただしました。石井浩二担当部長は「来年度のスキーム(枠組み)は検討中」と答え、否定しませんでした。
(長沢宏幸)