当事者ら 差別禁止の明記を 都が9月議会に人権条例案
 近年、性的指向による差別や偏見をなくし、多様性を認め合う共生社会を目指す動きが広がっています。他方、LGBT(性的少数者=ことば)カップルは「生産性がない」と誹謗中傷し、大きな批判を招いている自民党の杉田水脈衆院議員に見られるように、人権を無視した差別発言が、いまだに続いています。こうした中、東京都は9月の第3回定例議会に「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念実現のための条例(仮称)」(都人権条例)の提出を目指し、内容の検討を進めています。制定されれば、都道府県では初めてで、注目を集めています。
 
杉田発言「人権的にひどいこと」
 東京都は同条例の制定目的について「2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催都市として、人権尊重の理念がより一層社会に浸透していくこと」とし現在、全庁横断の検討会議を設置し、検討を進めています。
 
 都は条例案の「概要」を公表(6月4日)。それによると同条例は▽オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念を実現▽多様な性の理解の推進▽本邦(日本)外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取り組みを推進―するとしています。都は有識者に意見を求めるとともに、都民の意見を公募するパブリックコメントを行いました。
 
 6月の都議会総務委員会でも、都は概要について説明。共産党の原のり子都議は質疑で、条例案提出前に概要を発表し、都民に広く意見を求めたことを評価した上で▽概要が大まか過ぎる▽差別の定義や禁止が明記されていない▽当事者だけでなく誰もが相談できる窓口にすべき―ことなどを指摘しました。
 
 7月27日には、「LGBTだけでなく全ての人がSOGIハラ受けない東京へ」と銘打った集会で当事者から、さまざまな意見や期待の声が出ました。集会は当事者団体を含む実行委員会の主催で、都議会内で開かれました。
 
 SOGI(ソジ=ことば)は「性的指向」と「性自認」という意味。集会は実行委員会の構成団体の一つ、LGBT法連合会の事務局長が司会し、同性パートナーシップ・ネットの池田宏共同代表が集会開催の趣旨を説明。「(差別によって)まだ命を絶つ人もいる時代。みなさんの声を届け、条例をより良いものにしましょう」と訴えました。
 
 内藤忍弁護士(労働政策研究・研修機構)が、都条例(概要)の問題点について、セクハラ防止法やイギリスの平等法(2010年)を紹介しながら説明。差別禁止と明記されていないことや、「差別」の中にハラスメントやSOGIが含まれるのかが明確になっていないこと、罰則を含め実効性が担保されていないことなどを指摘。
 
 さらに相談窓口の対象が「LGBT等」とされることで、当事者はカミングアウト(公表)前提になってしまうことから、当事者の家族や友人など誰でも相談できる窓口にすべきこと、審議会設置を規定し、当事者が意見を述べられるようにすることなど、条例化にあたって改善すべき課題をあげました。
 
勝間氏「差別起きない条例に」
 リレートークでは、当事者や家族、支援者らが深刻な差別の実態を告発し、都条例への期待を語りました。海外通信社に勤めるゲイのフランス人は、海外生活で日本の遅れた状況を知ったとのべた上で「(LGBTへの差別は)徐々に変わってきているが、(都条例で)さらに良くなると期待している」と発言。
 
 港区でパートナーシップ制度を求める会を設立し、他の自治体にも広げる活動をしている男性は、20年前に暮らしたカナダでは、LGBTであることを隠すことなく豊かに暮らしていたことを紹介。「帰国せざるをえなくなった時、自殺を考えたが、それほど日本は住みにくい」とのべ、「都条例が私たちの活動のうしろだてになってほしい」と語りました。
 
 経済評論家の勝間和代氏とLGBT法連合会の増原裕子事務局長代理が対談。勝間氏は都条例について「無意識な偏見に引っ張られても差別が起きないような条例が必要だ。都がしっかりした差別禁止条例をつくれば、周りの自治体も焦ると思う。それぐらい強烈な条例がいい」とのべ、「差別禁止」を条文に明記する重要性を強調しました。
 
 また、杉田衆院議員への感想を問われ、「ああいう人を政権与党が支持するのはよくない。わざわざスカウトして比例名簿に載せて、人権的にひどいことを言っているのに本人の自由だと言っている」と、自民党を批判しました。
 
 集会では生活者ネットの山内れい子都議の司会で、都民ファーストの会、公明、自民、共産、立憲民主党・民主クラブ、かがやけの各都議があいさつしました。
 
▽LGBTとは 性的指向及び性自認などにより困難を抱えている人(セクシュアルマイノリティまたは性的マイノリティ、性的少数者)と同じ意味で使用されています。同性を愛する女性=レズビアン(Lesbian)、同性を愛する男性=ゲイ(Gay)、両方の性別を好きになる人=バイセクシュアル(Bisexual)、相手の性別にこだわらない人=トランスジェンダー(Transgender)の頭文字を取っています。
 
▽SOGI(ソジ)とは どの性別を好きになるか、ならないかを表す「性的指向」(Sexual Orientation=セクシャル・オリエンテーション)、自分の性別をどう認識しているかを表す「性自認」(Gender Identity=ジェンダー・アイデンティティー)の頭文字を取った言葉。

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東京民報