売り場の近くに荷物を整理するスペースや駐車場を確保することで、車や荷物がスムーズに流れる市場になります─。東京都は、豊洲市場をこうPRします。

 一方、建築エコノミストの森山高至氏は、豊洲新市場は「効果的な物流が実現できていない」と断言します(シンポジウム「築地市場の行方」)。

 その証左の一つとしてあげるのが、ターレ(小型電動輸送車)を使って荷を運ぶ走行試験結果です。水産仲卸売場から仲卸売場まで商品をターレで運ぶ想定で、実際に走らせて計測してみました。築地市場が39秒67なのに、豊洲市場は3分43秒、築地の6倍も要したのです。

 森山氏は、この要因が豊洲市場の構造上の欠陥にあると指摘します。豊洲では北側に位置する「水産仲卸売場棟」と南側に立つ「水産卸売場棟」の間を都道315号が走り、両棟を隔てているため、2つの建物をつなぐ4本の「連絡通路」を通って、行き来しなければならないのです。

 さらに建物が立体構造で、移動に手間と時間がかかります。走行動画には、建物内のスロープの急カーブを曲がりきれずにターレが壁をこすったり、荷崩れを起こす場面もありました。市場には千数百台のターレと500台前後のフォークリフトが稼働すると言われ、渋滞を心配する声が上がるのも当然です。

 これに対し築地市場は、扇上の平面に全ての施設がコンパクトに配置され、各売り場が隣接。働く人にとっても、買い出しに来る客にとっても効率がいいのです。市場の仲卸で働く中澤誠・東京中央市場労組委員長は「卸売市場の最高傑作」と胸を張ります。

開けないウイング
 森山氏はさらに、物流トラックの主流となっている「ウイング型」が使えないことを指摘します。

 ウイング型トラックというのは、ボディーの両側が、鳥が羽を開いたように広く開く大型トラックのこと。フォークリフトを利用して荷の積み下ろしが素早く、すき間なくできます。その特徴を生かすには、荷を積み下ろしする場所に、トラックを横付けする必要があります。

 ところが豊洲市場の指定場所は、後ろドアから荷を積み下ろすことを想定して設計されているため、横付けはできないというのです。天井(ひさし)までの高さも足りないため、ウイングを開けようにもつかえてしまうとの指摘も。業者からは、手間が4~5倍かかるのではないかとの不安の声があがっています。

 業界団体の要望を受けて都は、別の駐車場でも荷降ろしを認めるなど対策を検討していますが、解決には遠いとみられています。

深刻な駐車場不足
 駐車場不足も深刻です。業界から駐車場を増やしてほしいとの強い要望が出ています。市場へは1日1800台ほどの大型トラックの入荷があると言われ、出荷を合わせるとその倍以上の台数が出入りすることになります。

 さらに公共交通が「ゆりかもめ」に限られる豊洲では、車やバイクでくる業者や客が確実に増えると見られています。積荷の搬出入場所に駐車場を使わざるを得ないことが加わり、渋滞に拍車をかけるとの見方もあります。(つづく・長沢宏幸)

水産卸売場棟と水産仲卸売場棟を結ぶ連絡通路をターレで荷を運搬する訓練。築地と異なり多くの時間を要し、渋滞も心配されます=5月16日、江東区