築地市場 移転問題のいまを考える 食の安全投げ捨て その場しのぎの対策
 東京都が予定する豊洲新市場の開場(10月11日)まで4カ月に迫りました。ところが関係業者からは「移転は無理」との声がやみません。改めて築地市場の移転問題を考えます。
 
 「豊洲に移転できないことを確信した」。2日、「築地市場の行方」を考えるシンポジウム(希望のまち東京をつくる会主催)に参加した、「築地女将さん会」の山口タイ会長は、きっぱり語りました。
 
 シンポジウムでは、建築エコノミストの森山高至氏が豊洲新市場の現状を検証し、都があげた4つの目標▽食の安全・安心の確保▽効果的な物流▽さまざまなニーズに応えられる施設▽省エネや地域のにぎわいに貢献―のどれも実現できていないと断じました。
 
 東京都が、「50年先まで見据えた首都圏の基幹市場」として位置付け、総事業費約6000億円という巨費を投じて、整備を進めてきたのにです。
 
業者の信頼失う
 もともと豊洲新市場用地は、東京ガス工場跡地で、環境基準の4万3000倍もの発がん性ベンゼンをはじめ、ヒ素やシアンなど高濃度の有害化学物質に汚染された土地でした。市場業者はもちろん、「食の安全・安心」を不安視する幅広い都民が反対の声をあげました。
 
 都はこうした声を押しのけて移転を推進するために、都民、都議会に約束したのが、土壌も地下水も環境基準以下にする「無害化」でした。だから「食の安全・安心」は守れる、と言い張ってきたのです。
 
 ところが汚染地下水が地上に染み出てくるのを防ぐ「盛り土」は、主要建物の下にはないことが、共産党都議団の調査で発覚。汚染地下水の上昇を抑える「地下水管理システム」はまともに機能せず、破綻が明らかになっています。
 
 森山氏は地下水を封じ込める遮水壁の一部に高さ不足があるために、汚染地下水が市場用地内外に漏れ出ていることも指摘。汚染対策は「全部うそでした」と批判しました。
 
70億円かけるのに
 都議選(17年6月)直前に、「築地は守る、豊洲は活かす」と表明した小池百合子知事は、自ら立ち上げた地域政党「都民ファーストの会」が大勝した都議選が終わるや、「無害化」と「食の安全・安心を守る」との約束をほごに。「築地ブランドを守る」との公約も口にすることがなくなり、年末には、市場業者の不安の声に答えることもなく、追加の汚染対策工事で「安全」を確保するとした上で、豊洲市場を10月11日に開場することを決定しました。
 
 しかし、追加工事に総額70億円超もかけるのに、専門家から「その場しのぎ」との批判があがっています。
 
 対策内容は「盛り土」がなかった主要な建物下の地下ピットの床にコンクリートを敷設し、汚染物質が地下水から気化して市場内に浸入するのを低減させ、換気を行うというもの。しかし、コンクリートは劣化してひび割れすることが知られています。
 
 もう一つの対策は、揚水ポンプの増設などによる「地下水管理システム」の増強ですが、都は水位を測定する井戸の周辺に真空ポンプを設置。水位の数値は下がってはいますが、真空ポンプは工事現場に一時的に使用するもので、恒常的な設置は想定されていません。
 
 また降雨があると水位が上がるため、安全を検証する専門家会議の平田健正座長は「梅雨とのたたかい」と言うほど不安が残されています。
 
汚染原因調査せず
 生鮮食品を扱う市場にとって、食の安全・安心は命であり、有害物質による汚染は許されません。だからこそ都は、860億円もの巨費を投じて汚染対策を講じてきました。
 
 しかし都が行う地下水調査結果(昨年11月~今年2月採水分)では、これまで環境基準の最高130倍もの発がん性物質ベンゼンなどを検出。下がることがないのです。
 
 都は、「(ベンゼンは)タバコやガソリン中にも含まれており、自動車からも排出されるなどして、一般の大気からも検出」されているとし、濃度も環境基準以下で、地下水は使用しないので安全は確保されているとしています。
 
 一方、化学物質問題市民研究会の藤原寿和代表は、「敷地内に存在する有害物質を完全に除去しない限り、揮発性のあるベンゼンや水銀などは、現在も気化して大気中から検出されていることから、将来的に健康リスク発生の原因になりうる」(シンポジウム「汚染物質封じ込めで地質汚染は大丈夫か」5月19日)と警鐘を鳴らしています。
 
 なぜ、いまだに高濃度の汚染物質が検出されるのか―。
 
 実は原因が分かっていないのです。共産党都議団は、原因も分からないのに、まともな対策はできないと、都に何度も調査を求めても拒んでいるのです。NPO法人日本地質汚染審査機構の楡井久理事長も「科学的に調べれば汚染の状況は分かる。なぜ都はやらないのか。都合の悪いことでもあるのか」と、都を厳しく批判しています(同)。
(長沢宏幸)

中央区 党と区民が移転中止を要請
 日本共産党中央地区委員会と中央区議団、区民有志は5月29日、築地市場の移転中止を求める署名3623人分を小池百合子知事に提出(写真)。築地市場前で署名活動に取り組んできたもので、累計で1万5934人分になりました。
 
 応対した野田数・知事特別秘書は「重い署名をいただいた。要請の趣旨は知事にしっかり伝える」とのべました。