狛江市 高橋市長 セクハラ認め辞職へ 市民抗議、被害女性が実名訴え
 狛江市の高橋都彦市長(66)は22日、複数の市職員へのセクハラ行為を認め、辞職を表明しました。市として調査を行っていた水野穰副市長は21日、「市長がセクハラ行為を行っていたことが確認できた」とする調査結果を公表。市長はセクハラ行為を否定し、進退は白紙としていたものの、その後、被害を受けた女性職員4人が連名で市長に抗議文を提出していたことも分かりました。
 これを受けて22日、高橋市長は「率直に責任を取り辞職する」と表明しました。

市が調査で認定
 市が公表した臨時庁議の記録によると、関係する職員から話を聞くなどした結果、指摘されていた女性に対するセクハラ行為を認定。さらに女性職員2人に対する新たなセクハラ行為も確認されました。水野副市長がそうした結果を報告した上で、「市長は立場を利用して卑劣な行為を行った」と指摘。
 石森準一参与は「就任以来、何度となく、市長のセクハラ行為について直接・間接問わず聞いていた」「市民の中で市長のセクハラがうわさになっているので気をつけてください」と注意したが、セクハラ行為はやまなかったと発言。「あなたがその地位にいる限り、狛江市は一歩も前に進むことはできない」と、市長に辞職を考えるよう提言していました。
 
辞職求めた共産党
 日本共産党市議団の鈴木えつお幹事長は21日、「市長はセクハラ行為を認め、職員と市民に謝罪し直ちに辞職すべき」とする談話を発表していました。(2面に続く)
 
狛江市長辞職 抗議署名3700人 「市の恥だ」
 高橋市長の辞職表明(22日)は、市民の強い抗議を受けたことによるものです。高橋市長は21日の会見で「セクハラ次元での言動をした覚えはない」とセクハラ行為を否定。さらに被害職員は思い当たるとして、「思い込みが激しい人」「直接話せば誤解は解ける」などと、2次被害につながる発言を繰り返しました。
 会見を聞いた超党派で疑惑を追及してきた女性議員有志の会メンバーらは「自身の保身のために女性職員を傷つけていいのか。トップの資格はない」(共産党・西村あつ子市議)などと憤りを隠しませんでした。
 真相解明と再発防止を求める署名3723人分を市に提出した市民団体代表の周東三和子さんは「狛江市の恥だ」と怒りました。
 高橋市長の問題は、体を触るなどのセクハラ行為で複数の職員からの相談内容が書かれた内部文書を入手した共産党市議団の議会追及で明らかになっていました。
 市長は「身に覚えがない」などと否定してきましたが、狛江市職員組合も「組合員のなかに、被害にあわれた方々が複数いることは事実」とするビラ(4月17日付)を発行していました。
 共産党市議団の鈴木えつお幹事長は21日、直ちに辞職すべきとする談話で「すでに市長に対する職員の信頼は失墜しており、市長がこのまま居座り続けることは、被害女性に耐えがたい苦痛を与えるとともに、市政運営に重大な支障となる」と断じていました。
 
 
セクハラ、軽蔑しよう
被害解決はリーダーの責任
劇作家 平田オリザさんに聞く

 連日、セクハラ報道が続きます。福田淳一前財務事務次官による女性記者へのセクハラを皮切りに、擁護発言を続ける麻生太郎財務相。地方政治では高橋都彦狛江市長などニュースに事欠きません。安倍首相は「女性活躍社会」を謳っていますが、「活躍」ではなく「活用」「消費」の観点しか見えてきません。2000年から自身の劇団でセクハラ対策を進めてきた、劇作家・演出家の平田オリザさんに聞きました。
(記事・菅原恵子 写真・田沼洋一)
 
 ―自身の劇団でセクハラをなくす取り組みをされたのは何故でしょう。
 
 平田 私たちの劇団では子どもを生んでも仕事を続けられる劇団にしよう、働きやすい職場を作ろうとしていた中で、セクハラ対策の必要を感じました。ちょうど私が大学で教えるようになり、大学では対策が始まっていて、これからの時代はこうなるのだろうと、始めたということです。
 
 ―実際はどのようなことに取り組みましたか。
 
 平田 ルールは普通です。主に2つあって、演劇の現場では(恋愛も演じますから)身体接触もあるので勘違いしやすい。これは避けられないので、より注意しようと。夜まで仕事が続いたり、旅する地方公演などの集団生活もあります。通常のセクハラ規定も、こういうことはダメだとか、これは相手が嫌だと思ったらダメですとか普通の会社より厳しめにつくってきました。
 
 それ以外に、当時の決まりでいうと、年上の男性が女性に一対一で飲みに誘ってはいけないとか。これは劇団内のこともありますが、私たちは教育行政に携わっていて地方でワークショップもある中、参加者側から誘われることもあります。そういう時にも一対一は基本的に避けるようにとかのルールがあります。
 
 
職場の血流悪く
 
 ―実際に劇団では、どのような変化がありましたか。
 
 平田 うちの劇団は150人位いて、そのうち100人が女性ですが、子どもは50人以上生まれている。小劇場界では圧倒的に多いです。生み始めると、生むことを前提に組織が動き出すので、それが当たり前になっていく。ベビーカーも3代とか引き継がれて、子育てコストも下がる。人間の子育ては元来、集団でやるもので個人がやるものではありません。
 
 子どもが生まれる企業と生まない企業は、はっきりと分かれる。おそらく生まれる企業は日常的にセクハラの問題も少ない。そういうレベルをクリアしている企業と、全く旧態依然の企業とに二分化しているのではないかと思います。財務省のセクハラ問題は、たまたま旧態依然の財務省と旧態依然のマスメディアがぶつかったということではないでしょうか。
 
 セクハラ発言をなくすとコミュニケーションもなくなるなんて、はもともとダメな企業でしょう。そういうことを規制したからといっても職場の雰囲気が殺伐とすることはなく、逆に風通しが良くなります。
 
 もう一つ、セクハラをする人は表面的に仕事が出来ても、実は職場の血栓みたいな人で、他人が物を言えず、色んなコミュニケーションが止まっている。実務は出来るかも知れないが、職場全体の利益からすると、その人が居なくなった方が血流が良くなる。当初はとても大変でも克服できます。
 
 権力を握っていて、誰も言えないからセクハラ、ハラスメントが起きる。痴漢とかと似ていて、無意識に本当にばれないようにやります。
 
 ―「血栓」と言われましたが、セクハラもパワハラの一環でないかと感じますが。
 
 平田 大体そうですね。ハラスメント全体でいうとほとんどがパワハラの要素を含んでいて、さらにその中に、性的なものが含まれるとセクハラと呼ばれるケースの方が多い。先輩女性に相談したら「そのくらい我慢しなさいよ。私たちの若い頃は」といまだに言う人もいます。しかし、被害女性にとって、それは暴力でもあります。
言葉の民主化も
 
 ―これは本人の問題なのか、社会の慣習の問題どちらなのでしょうか。
 
 平田 両方だと見ないといけません。個人としては依存症的なものとして見ないといけませんし、すごく男尊女卑のような育ち方で女性を性的な対象としてしか見ていなかったりする人。麻生さんとか治らないですよね。相当痛い目に遭わないと40、50歳を過ぎたら、なかなか治らない。
 
 僕の専門でいうと言語の問題も大きい。日本語は男性や年長者が優位な言語になっているので、言葉の民主化という問題もあります。上場企業の4割では役職で呼ばず「さん」付けで呼んでいますが、そういう小さいところから変わっていく事も多い。ジェンダーを意識しないようにさせるような、言葉の問題など、色んな要素があります。しかし、もう一つ大きいのは組織の問題で、やはりリーダーが不退転の決意でハラスメントを撲滅するんだと宣言し、行動しないとなくなりません。
 
 ―セクハラ、パワハラの根っこは同じということで、セクハラを理解できない麻生財務相などが「女性活躍社会」などと言っていますが。
 
 平田 女性がそもそも男に尽くすものという、女性を利用する体質、性的な対象と見ることも同じですが、そうなっているのだと思います。
 
 ―日本の歴史観でしょうか。
 
 平田 それもありますし、今の全体の傾向でいうと子どもの数が少なくなっていますので、男の子が接触する異性はお母さんだけというような問題もあります。二十歳過ぎるまで、自分のお母さん以外の年上の女性と話したことがないという子がいくらでもいる。これは大変。
 
 ある学校に女優が行ったら高2の生徒にいきなり「バストいくつですか」と聞かれたということもありました。本当に性的対象としか見ていない。
 
 社会全体が多様性を考えるようになっているのに、子育ての環境が多様性を認めない方向になっているという矛盾を抱えている。本当は幼少期から人格形成がされる思春期くらいが一番大事なので、色々な人と出会うことが一番大事です。
教育の蓄積こそ
 
 ―変えるには何が必要ですか。
 
 平田 長期的にいちばん大事なのは教育です。30年50年かけても。日本はもともと多様性に対する対応に弱い国なので、その自覚を持って教育が全面的に共生型にシフトしていく。韓国は相当前から教育の中で多様性の理解を勧めているし、台湾も女性総統がLGBTに理解ある方で大きな変革が起きている。日本はアジアの先進国の中でも遅れを取っている自覚がないと、本当に世界から取り残されていってしまう。
 
 韓国で#MeToo運動が日本以上に広がるのは教育の蓄積と、彼らは自分たちで何度も政権を変えている自信があるので、自分たちの力で社会が変えられると信じている。日本の若い子たちは諦めちゃうでしょ。小さいことも大きいことも両方とも。
 
 ―日本はなかなか変わらない現実があります。
 
 平田 今の政権では無理です。世界がこれだけ変わろうとしているときに、この5年間(安倍政権)の損失はすごく大きかった。
 
 今の大学生は生まれたときから日本は停滞の中にあり、変わるということが実感できない。学生によく言うのは「大企業に入っても変わらない」と思うかもしれないけど、〇〇部〇〇課なんていうのはせいぜい20人位のチーム。人体で言えば君が入ったことで細胞の5%位が変わるのは大きな変化でその集団は変わるはずだということです。(2面に続く)
 
 ―展望はあるのでしょうか。

 平田 2つあります。希望を失ってはいけない。良くなっていることもあります。NPOなど市民運動の組織が出来てきました。阪神淡路大震災の時にはNPOがなくて、よくあそこまで支援できたと思います。東日本大震災ではNPOが支援の中核を担った。そこに希望がある。絵空事みたいな希望を言っても仕方ないので、防衛戦であったとしても大きな破綻を防ぐような地道な教育などが大事というのが僕の立場です。
 
 もう一点、喫緊の課題としては組織のリーダーがきちんと決断をすること。人手不足だから、今は改革のチャンスです。働きやすい職場をアピールする企業も多いので、もっとハラスメントは告発したらいい。対策をしたほうが長期的に生産性も上がります。
 
 ―今すぐ、簡単に出来るハラスメント対策は。
 
 平田 ハラスメントを容認する人を軽蔑することでしょうね。それを公言する。若い人の言葉でいうと「麻生さんキモイ」などというように。